末期ガンと腹水の関係

末期がんと腹水の関係は? 症状や原因・治療方法を解説!

アタナハクリニック 院長 矢崎智子

記事監修
アタナハクリニック 院長 矢崎智子
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末期がんになるといろいろな症状が出てきます。腹水もそのひとつ。今回は、この腹水の治療法や痛みを緩和する方法をご紹介しましょう。

がんも末期になると「痛みをできる限り取りのぞいて、家族との時間を大切に過ごす」という治療法になります。ですから、通常の腹水の治療とは異なる方法もあるのです。

家族ががんになり、最後を穏やかに迎えさせてあげたいと思っている方も、ぜひこの記事を読んでみてください。

  1. 末期がんと腹水の関係は?
  2. 末期がんにおける腹水の治療法は?
  3. 家族にできることは?
  4. おわりに

1.末期がんと腹水の関係は?

まず、末期がんと腹水の関係についてご説明しましょう。なぜ、がんが進行すると腹水がたまってくるのでしょうか?

1-1.腹水とは?

腹水とは、腹腔(ふくくう)へ過剰に水がたまる症状です。私たちの腹部には、内臓がつまっていますが、その内臓は腹膜という膜で包まれています。この腹膜と内臓の隙間が腹腔です。腹腔の中には、常時20ml~50mlくらいの水がたまっていますが、病気になるとその水が異常に増えてしまいます。これが、腹水です。腹水がたまると内臓が圧迫されてお腹の張りや食欲不振、さらに痛みなどを感じます。

1-2.腹水がたまる理由

がんとは、内臓や血液、リンパなどにがん細胞が増殖して正常に機能しなくなる病気です。がんは、心臓などの一部を除く全身に発症する可能性があります。

初期のがんならば手術や化学療法などで治療できるでしょう。しかし、がんが進行すると転移といってがん細胞が全身に散らばって増殖を開始します。そうなると、現代医学では治療法がありません。

末期がんになると、内臓が「がん性炎症」を起こします。すると、炎症を起こしている部分から水分がもれて腹膜にたまるのです。

また、肝臓で作られる「アルブミン」という物質は、血液中の水分をたもち体の中の余計な水分を血管内に引き入れる働きがあります。

しかし、がんが進行すると肝臓の働きが低下して、アルブミンを十分に作れなくなるのです。
すると、本来は血管に引き入れられて体外へ排出される水分が、腹腔(ふくくう)内にたまってしまいます。

1-3.腹水がたまるとどうなるの?

前述したように、腹水がたまると内臓が圧迫されます。すると、腹部の張りを感じて飲食ができなくなるでしょう。食事が十分に取れなくなると、体の衰弱が一気に進むこともあります。

また、栄養を補おうと高カロリーの輸液を行うと、腹水がさらにたまってしまうのです。さらに、腹水以外にも胸に水がたまる「胸水(きょうすい)」や、手足のむくみが強くなることもあるでしょう。

そうなると、起き上がることさえつらくなってしまうことも珍しくありません。

肝臓の機能が低下すると腹水になってしまうんですね。
腹部の張りが原因で食事が上手くできず、体の衰弱が進んでしまうのです。

2.末期がんにおける腹水の治療法は?

家族が苦しんでいるのを、黙ってみているのはとてもつらいです。では、末期がんでも腹水の治療法は可能なのでしょうか?この項では、その一例をご紹介します。

2-1.通常の腹水の治療との違いは?

がん以外の病気でも、腹水がたまることはあります。この場合は、肝臓で作られるアルブミンを点滴したり、腹水を抜いたりする治療が一般的です。しかし、末期がんの場合はアルブミンを点滴しても腹水を抜いても、すぐにまた元通りになってしまうことが多いでしょう。

また、腹水が抜けると体内の水分が一気に抜けたことで脱水症状が起きる可能性もあるのです。「腹水ろ過濃縮再静注法」といって、腹水をいったん抜いてタンパク質など必要な栄養分だけ再び体内に戻すという方法もありますが、この治療法は残念ながら、まだ健康保険が適用されません。

ですから、治療費が高額になるため何度も行える方はごく少数です。そのため、末期がんの患者さんには腹水そのものを治療するより、痛みの緩和を最優先にした治療が行われることが多いでしょう。

2-2.利尿剤を使う治療

利尿剤とは、尿の出をよくする薬です。利尿剤を使えば、多少ですが腹水を軽くすることができます。尿は、体の毒素を出す働きもありますし、「尿を出す」という行為は体の機能の一部です。ですから、体に負担をかけることなく腹水を減らせるでしょう。

2-3.モルヒネなどの痛み止めを使う

末期がんになると、痛みが強く出る方も少なくありません。そこで、モルヒネなど鎮痛作用のある麻薬を使用することにより、痛みを抑える治療が行われます。

このモルヒネには、腹部の張りを感じさせなくする効果もあるのです。末期がんになると前述したように、腹水を抜いてもすぐにまたたまってきてしまいます。ですから、腹水そのものではなく腹水がたまることによって感じる苦しさを軽減させる治療法の方が有効ということも多いでしょう。

ただし、モルヒネの量を増やしていくと、だんだんと意識のある時間が短くなってきます。
腹水がたまり始めるということは、余命が一か月を切った状態であるというサインでもあるのです。

ですから、残りの時間をどう過ごすのか、家族とよく話し合ってモルヒネの量を調節していきましょう。たとえ眠っている時間が長くなっても、本人が穏やかな気持ちで過ごせるならば、それが一番です。

腹水の治療に関することがわかりました。
末期がんの場合は腹水そのものの治療よりも、痛みの緩和がメインになってきます。

3.家族にできることは?

愛するご家族ががんを発症するということは、とてもつらいことです。しかも、末期がんになると、「自分に何ができるだろう」と思い詰めてしまう方も少なくありません。

家族にできる最良のことは、患者さんの傍についてあげることです。たとえ何もできなくても、長年一緒に過ごしてきた家族が傍にいてくれるほど、心強いことはありません。

また、むくんだ足や手をさすってあげるだけでも痛みが軽くなる患者さんが多いのです。がんは治療法がない怖い病気である、というイメージが強いでしょう。しかし、特に高齢になって発症したがんは進行が遅く、末期になるまで時間がかかることも珍しくありません。

また、がんが末期になっても最後の時を迎えるまでには時間がかかります。ですから、家族と思い出話をしたり懐かしい友人にあったり、行きたいところへ行ける時間はあるのです。なので、思い残すことがないように患者さんと向かい合ってあげましょう。

傍にいることが大事なんですね。
そうですね。何もできない、と思い詰めないでください。傍にいることが力強い支えになるはずです。

4.おわりに

いかがでしたか? 今回は末期がんの症状のひとつである腹水についていろいろとご説明しました。末期がんは、現代の医学でも治療法がありません。ですが、痛みを軽くすることは可能です。ですから、主治医と一緒に患者さんが残された時間をゆったりとした気持ちで過ごせるような治療法を探していくことが一番でしょう。

また、患者さんの家族は苦しんでいる姿を見ると自分を責めてしまいがちです。しかし、自分を責めてはいけません。人は誰でも寿命があります。

ですから、残された時間をいかに患者さんと向き合って過ごせるかが大切なのです。「自分は何もできない」と思うのではなく「自分は傍にいてあげられる」と思いましょう。実際、家族に囲まれて穏やかな時を過ごしている患者さんは、痛みが軽くなる傾向にあります。

病院によっては、家族が長時間一緒に過ごせるようになっているところもあるでしょう。患者さんの希望をできるだけ叶えて側にいてあげるだけでも喜んでもらえるはずです。

アタナハクリニック院長 矢崎 智子

監修者

矢崎 智子
アタナハクリニック院長
日本産科婦人科学会認定医/高濃度ビタミンC点滴療法学会理事/世界アンチエイジング学会認定医/日本内分泌学会・国際オーソモレキュラー医学会・病巣疾患研究会会員/日本線維筋痛症学会会員

1969年長野県生まれ。平成6年杏林大学医学部卒。産婦人科医としての経験を積んだあと、2005年11月、分子整合栄養医学に基づく栄養療法と東洋医学を中心とした統合医療をおこなうクリニックハイジーアを開設。関節リウマチや線維筋痛症、慢性疲労症候群、摂食障害など、通常治療困難とされる疾患や、不妊症などの婦人科疾患の治療において豊富な臨床経験を持つ。日本では数少ない機能性医療の専門家であり、最も経験豊富な一人。

平成24年、医療とヒーリングの統合を目指し、アタナハクリニックを開設。現在はキネシオロジー(筋肉反射テストを使ったセラピー)の一種であるインテグレートヒーリング(IH)を中心とした統合医療を行なっている。

著書
なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病

雑誌掲載歴
2014年:『ゆほびか(6月号)』『スターピープル(vol49)』『スターピープル(Vol.48)』
2013年:『トリニティ(Vol.48)』
2011年:『日経ヘルス(1月号)』
2010年:『VoCE(12月号)』『AERA with BABY』『anan(1月20日号)』
2009年:『クロワッサン(6月10日号)』『クロワッサン(1月25日号)』