
線維筋痛症を改善するために知っておきたい5つの基礎知識
もしかしたら、線維筋痛症かもしれない。そんな悩みを抱えていませんか? 線維筋痛症は聞き慣れない人も多い病気の1つですが、だからこそ不安を抱えやすいものです。ここでは、線維筋痛症の症状や原因などについて、詳しくご紹介していきます。
1.線維筋痛症とは?
1-1.線維筋痛症とはどんな病気なのか?
そもそも、線維筋痛症とはどのような病気なのでしょうか。結論から言うと、線維筋痛症は全身的慢性疼痛疾患と言われています。その名前の通り、体全体に激しい痛みを感じる病気です。
1-2.線維筋痛症の原因
残念ながら、線維筋痛症のはっきりとした原因は明らかになっていません。実際に痛みを感じている部分には、特に異常が出ることはないのです。
1-3.線維筋痛症のメカニズム
それでは、一体どのようなメカニズムで線維筋痛症による痛みが出ているのでしょうか。線維筋痛症は前述した通り、はっきりとした原因が分かっていない病気です。しかし、最近ではその痛みが起こるメカニズムが少しずつ分かってきています。現段階で最も注目されているメカニズムは、この病気を抱えている人に精神的ストレスがかかったり、身体的ストレスがかかったりすることで痛みが起こるというものです。これらの要因によって、疼痛知覚神経が過剰興奮してしまいます。通常、体が痛みを感じると脳が痛みを抑える仕組みとなっていますが、線維筋痛症の人はこのときの脳の働きが機能せず、痛みだけが暴走状態となってしまうのです。
1-4.どんな人がなりやすいの?
線維筋痛症は、女性に多い病気と言われています。日本では、男性:女性=1:5の割合とされており、平均年齢は55歳から65歳と言われているのです。
1-5.日本の患者数はどのくらいなのか?
厚生労働省が行った線維筋痛症についての住民調査の結果では、日本での患者数はおよそ200万人と言われています。この数は、欧米の患者数とほとんど同じとされており、近年ではリウマチよりも患者数が多い病気として注目されているのです。
2.線維筋痛症の症状について
2-1.線維筋痛症はどんな痛み?どこが痛むの?
線維筋痛症の代表的な症状は、全身の慢性疼痛や、体の部位が痛むというものです。この痛みは、体の中心部に行くほど起こりやすくなります。また、関節リウマチと同じように、朝に症状が悪化しやすいというのも特徴の1つです。
2-2.早期発見するためのポイントは初期症状に注意すること
線維筋痛症は、ひどくなると日常生活にも支障を来すレベルの痛みを抱えてしまうようになります。そうならないためにも、早期発見して早いうちから治療を進めていくことが大切です。早期発見のポイントは、定期的に自分でセルフチェックを行うことでしょう。痛みは自分にしか分からないものですから、日頃から意識してチェックを行う習慣をつけてみてください。
2-3.セルフチェックによる診断方法
それでは、線維筋痛症のセルフチェックを行ってみましょう。次のうち、皆さんはどれだけ当てはまるでしょうか?
- 疼痛を感じている
3か月以上に渡って、関節痛や筋肉痛が続いている、または頭痛や胃痛、背中・肩の痛みに悩まされている。
- 圧痛
普段は特に痛みを感じることはないのに、特定の部位を指などで押すと強い痛みを感じること。
- こわばり
主に手足に力が入りにくくなり、動かしづらくなる症状のこと。朝に発生しやすい症状で、ひどいときは布団から起き上がれなくなってしまうことも。
- 疲労感
線維筋痛症の代表的な症状の1つ。症状が悪化してくると、起き上がることもできないほどの疲労感を伴うことがある。
- 睡眠障害
痛みがあるため、眠ることができずに睡眠障害に繋がるケースもある。痛みで眠れないことで睡眠不足になり、それがストレスとなってさらに睡眠障害を引き起こす…という悪循環に陥りやすい。
- 抗うつ状態
痛みを周囲の人に理解してもらえないことから、精神的なストレスを感じてしまうことでうつ病につながることもある。抗うつ状態となると、より痛みを感じやすくなるため悪循環に陥ってしまう。
さて、いくつ当てはまりましたか?以上が線維筋痛症の初期症状です。
当てはまった数が多いほど、線維筋痛症の可能性が高くなります。少しでもおかしな状態が続いている…と感じた場合は、速やかに専門の病院で診察してもらうようにしましょう。
3.線維筋痛症を治療するには?
3-1.線維筋痛症の診断基準について
線維筋痛症の診断方法ですが、全身的に3か月以上の慢性的な疼痛があることを中心に判断されます。これに加えて、全身18か所にある部位のうち、11か所以上に圧痛を確認することができれば、線維筋痛症と診断されるのです。
3-2.どんな治療方法があるの?
線維筋痛症と診断された場合の治療法には、次のようなものがあります。
- 薬物治療
- 漢方治療
- 物理療法(電気治療・温熱治療)
- 運動療法
- 心理療法
- 代替療法
- 生活習慣の見直し
- 鍼灸治療
基本的に、線維筋痛症は明確な治療法が存在しません。そのため、症状の様子を見つつ治療を進めていくことになるのです。万が一、線維筋痛症が原因でうつ症状が出ている場合は、心療内科と連携を取りながら治療を進めていくことも大切となります。
3-3.主に使われる薬と副作用について
線維筋痛症には、主に次のような薬剤が投与されることとなります。
鎮痛剤
アスピリン・ボルタレン・バファリン・ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬のほか、ノイロトロピンのようなものも使われます。ノイロトロピンは、イエウサギの皮膚組織抽出物をワクシアニウィルスを使って特殊処理したものです。
鎮痛剤は、人によって腎臓や肝臓に支障をきたしたり、喘息発作を誘発したり、吐き気・むくみ・じんましん・口内炎などの副作用がでることがあります。
ホルモン薬
プレドニンやデカドロンなどの副腎皮質ステロイド薬が使われます。
ホルモン薬では、吐き気や胸の張り・むくみ・いらいら・情緒不安定・頭痛・けん怠感・不正出血などの副作用が起こることがあるので注意しましょう。
抗けいれん薬
ガバペンチンがよく使われる薬です。
抗けいれん薬は、飲み始めにめまいやふらつき、眠気、頭痛などの副作用が出やすいと言われています。また、服薬量が多い場合は複視、めまい、視界がぼやけるといった副作用が出ることがあるため注意が必要です。
抗うつ剤
パキシル、デプロメール、ジェイゾロフト、ルボックスなどの三環系抗うつ剤などが使われます。
抗うつ剤によって、副作用はさまざまです。代表的なものは体重の増加、けん怠感、吐き気、眠気と言われています。
3-4.線維筋痛症との付き合い方
線維筋痛症は、周囲に理解されにくい病気の一つです。当事者にとっては痛みとの戦いが辛く、日常生活がうまくいかなかったりすることもあるでしょう。しかし、周囲の人に理解してもらえず、傷つくことは少なくありません。また、線維筋痛症はどうしても、痛みと一生付き合っていかなければならないものです。そのため、その症状と上手く付き合っていくことが必要不可欠となります。症状が出たとき、いかにその症状を和らげるかなど、日頃から工夫しながら上手に付き合っていく方法を模索していきましょう。また、上手な付き合いを続けていくためにも、周囲の理解があることは非常に大切です。親しい友人や家族など、理解者をなるべく増やして気軽に相談できる環境を整えていくと良いでしょう。
4.線維筋痛症と併発する病気について
4-1.どんな病気があるの?
線維筋痛症には、併発する危険性のある病気がたくさんあります。たとえば、関節リウマチや強皮症・シェーグレン症候群・全身性エリテマトーデス・変形性脊椎症・脊椎関節炎などです。また、そのほかにも慢性疲労症候群に似た病気を併発することもあります。また、周囲に理解されにくいことから、心身的な面に大きな傷を抱える人や、痛みがつらくヒステリーなどを起こしてしまう人も多いです。
4-2.注意点はあるのか?
上記でご紹介したように、線維筋痛症は併発する可能性があるさまざまな病気が存在します。このような病気を併発しないようにするためにも、早い段階で治療を始めることが必要不可欠です。少しでもおかしいと思うところがあれば、早めに専門の医師に相談していきましょう。
また、線維筋痛症と診断された場合は、なるべく周囲に理解者を作っていくように心がけてください。線維筋痛症自体、当事者本人でないと本当の苦しみは理解しづらいものです。しかし、親しい人と真正面から向き合ってコンタクトを取ることで、相手に理解してもらえる可能性も高くなります。理解者ができず一人で抱え込むようになると、うつ病などの精神的疾患を併発しやすくなるので、注意しましょう。
5.線維筋痛症の体験記
5-1.npo法人線維筋痛症友の会紹介
線維筋痛症は最近になって、ようやく注目されるようになってきた病気の1つです。しかし、そうはいってもまだまだ認知度は低いもの。反面、患者数は意外と多く、決してまれな病気というわけでもありません。そんな線維筋痛症を抱える人たちが、少しでも周囲に理解者を増やして負担を軽減するために…という願いから作られたのが、NPO法人線維筋痛症友の会です。同じ苦しみを共有しあえる人を一人でも多くするためにも、ぜひ入会してみることをおすすめします。
5-2.ブログリンク
それでは、実際に線維筋痛症を抱えて生活している人たちのブログをご紹介していきましょう。
6.よくある質問
Q1:線維筋痛症は保険適用外となるのでしょうか?
A1:昔は保険適用外と言われていましたが、近年では認知度も上がってガイドラインも作成されているため、保険収容されている病気です。
Q2:線維筋痛症は遺伝するのでしょうか?
A2:欧米では線維筋痛症が遺伝するということが昔から知られています。一親等に線維筋痛症を抱える家族がいる場合、女性は71%、男性は35%の確率で遺伝する可能性があるのです。
Q3:検査でどのような症状が見られる?
A3:線維筋痛症は機能性の病気です。そのため、一般的な検査では特に異常がでることがありません。
近年では脳画像検査の技術が進んでいるため、MRI検査やCT検査で脳が痛みを感じているかどうかを判断し、異常がある、ないを彰関するという検査も行われているのです。
Q4:線維筋痛症は何科を受診すればいいのか?
A4:アメリカなどの海外では、100年前から認知されている線維筋痛症ですが、日本では去年ようやく保険治療が認められたばかりです。もちろん、難病認定もされていません。このため、何科を受診すればいいのか悩んでしまう人は多いでしょう。
基本的に、線維筋痛症かなと思ったときはリウマチ科や整形外科を受診することをおすすめします。精神面に不調があり、尚且つ専門医がいる場合は心療内科にかかるのも良いでしょう。どうしても身の回りで病院を見つけられない場合は、npo法人線維筋痛症友の会などを利用して病院を検索するというのも1つの方法です。こうしたサイトで同じ境遇の人と交流することで、情報交換をしながら何科を受診すべきか考えていくのも良いでしょう。
Q5:線維筋痛症の治療に役立つ食べものはあるの?
A5:線維筋痛症の人には、全粒穀物が豊富に含まれる食事が良いとされています。脂肪の少ないタンパク質を中心に、野菜や果物をバランスよく食べると良いでしょう。脂肪や砂糖を多く含む食品を摂取しすぎるのはおすすめできません。これらの食事は、線維筋痛症による炎症を促進させてしまう可能性があるためです。線維筋痛症に悩まされている人は、このような食事をできるだけ避けて、バランスよく健康に良い食事を心がけてみましょう。
7.お役立ち・関連リンク
日本線維筋痛症学会
平成21年の4月に学会として発足したサイトです。
線維筋痛症 Fibromyalgia
線維筋痛症の病気や研究についての情報満載な、浦野房三先生のサイトです。
知っておこう!線維筋痛症
線維筋痛症についての基礎知識が掲載されているサイトです。
JFSA 線維筋痛症友の会
NPO法人が運営している、線維筋痛症を抱える人のためのサイトです。入会することで、同じ線維筋痛症に苦しむ人たちとの交流が可能となります。
まとめ
線維筋痛症の基礎知識やお役立ち情報についてご紹介してきましたが、いかがでしたか? 線維筋痛症は、なかなか周囲に理解されにくく、当事者はつらい痛みと付き合っていかなければならないため、大変なもの。しかし、基礎知識を身につけて、上手く付き合っていけるすべを模索していくことで、上手にコントロールしていけます。ほかの病気を併発してしまうことを防ぐためにも、線維筋痛症についての正しい知識を身に着けていきましょう。