胸郭出口症候群の症状や原因

胸郭出口症候群の症状や原因・治療法などについて徹底解析!

アタナハクリニック 院長 矢崎智子

記事監修
アタナハクリニック 院長 矢崎智子
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肩がこる・背中や腕がだるくなるなどの症状で悩まされている場合、「胸郭出口症候群」をわずらっている可能性があります。聞き慣れない単語ですが、近年、患者数が増えてきている症状です。その原因は、携帯電話やスマートフォンなどを扱うこと、運動不足の人が増えていることだといわれています。決して、私たちの生活に関係ない症状とはいえません。そこで本記事では、胸郭出口症候群の基礎知識や原因・セルフチェック法・セルフケア・治療法について詳しく説明します。

  1. 胸郭出口症候群の基礎知識
  2. 胸郭出口症候群の原因について
  3. 胸郭出口症候群のセルフチェック
  4. 胸郭出口症候群のセルフケア
  5. 胸郭出口症候群の治療法
  6. 胸郭出口症候群にかんしてよくある質問

この記事を読むことで、胸郭出口症候群の症状をやわらげるために必要な知識と治療のポイントを知ることができます。悩んでいる方はぜひチェックしてください。

1.胸郭出口症候群の基礎知識

症状をやわらげるためには、胸郭出口症候群について詳しく把握しておかなければなりません。胸郭出口の概要や主な症状などについて詳しく説明します。

1-1.どんな病気か

何かしらの原因で筋肉が血管と神経を圧迫することで起こるのが、胸郭出口症候群です。首・鎖骨・肩まわりには血管と神経が圧迫されやすい部位があります。主に、鎖骨周辺にある腕神経叢(わんしんけいそう)などの末しょう神経の束が、血管と同時に圧迫されるのです。圧迫された部位は、普段の動作ができなくなり、全身にだるさを感じたりします。

1-2.主な症状

胸郭出口症候群の主な症状は、手指や腕のしびれと肩こりです。普段はしびれを感じなくても、手や腕を動かしたときに突然感じることがあります。熱感・冷感・脱力感も胸郭出口症候群の初期症状です。そして、少しずつ悪化し始めると、肩甲骨周辺に痛みが出てきます。最初はうずくような痛みですが、刺されたような鋭い痛みが起きることもあるでしょう。ほかにも、手や腕が暗青紫色になる・耳鳴り・頭痛・めまいなどが見られます。

1-3.関連する症状

主な症状のほかにも、運動障害や感覚障害が起こります。運動障害は細かい作業ができない・握力が低下するなどの運動麻痺(まひ)全般です。感覚障害はうずくような痛みやしびれ感が手・肩などに現れます。力が入らなくなることもあるため、ものを持つことが難しくなるのが特徴です。

1-4.生活への支障

初期症状の段階では、普段の生活にあまり不便は感じません。「時間がたてば治る」と思われがちですが、状態が悪化すると生活に大きな支障を与えます。常に痛みやしびれなどの症状がつきまとうため、精神的なストレスも感じるでしょう。症状がひどくなると、通常の生活ができなくなる恐れがあります。できれば、初期症状のうちに対策をしておかなければなりません。

2.胸郭出口症候群の原因について

治療法を知る前に、なぜ胸郭出口症候群の症状が出ているのか原因を突き止めることが大切です。主な原因や肩まわりのメカニズムなどについて詳しく説明します。

2-1.主な原因について

胸郭出口症候群の原因は多岐に渡ります。一般的によくある原因といわれているのが、ストレス・不規則な生活習慣・けが・不良姿勢・胃腸障害・骨や椎間板の老化です。これら複数の原因が重なって胸郭出口症候群が起こります。たとえば、骨や椎間板が弱っているときに過剰なストレスがかかるなどです。また、なで肩など骨格的な問題が原因になっていることもあります。

2-2.肩まわりのメカニズム

肩は多数の筋肉が束になって集まっている部位です。僧帽筋や頸板状筋(けいばんじょうきん)・肩甲拳筋(けんこうきょきん)・菱形筋(りょうけいきん)など首から肩につながっている筋肉もあります。そのため、筋肉が緊張を強いられると、肩だけでなく首の筋肉も張って動かしにくいなどの影響が出てくるというわけです。また、筋肉が硬くなるほど血流が悪くなり、こりや痛みが悪化します。多数の筋肉が集まっている肩まわりは、上半身の動きをスムーズにするための大切な部位なのです。

2-3.関連する病気について

胸郭出口症候群の症状は、手根管症候群・頸椎症(けいついしょう)・肘部管(ちゅうぶかん)症候群の症状と似ています。症状だけでなく、現れる場所も似ているため注意が必要です。それぞれの特徴を以下にまとめたので、ぜひチェックしてみてください。

  • 手根管症候群:手指のしびれが夜遅くから明け方にかけて強く表れる。手を振るとしびれがなくなることが多い
  • 頸椎症(けいついしょう):脊髄神経が圧迫されることで起こる。指・腕・肩にしびれが起き、首を前屈・後屈すると症状が悪化しやすい
  • 肘部管(ちゅうぶかん)症候群:肘の屈折をくり返すことで尺骨神経が圧迫され、しびれが起きる。特に、小指・薬指・肘・二の腕に現れることが多い

3.胸郭出口症候群のセルフチェック

自分が胸郭出口症候群になっているか、判断できない方は多いでしょう。そこで、胸郭出口症候群のセルフチェック法を紹介します。症状を確認しながら、ぜひチェックしてみてください。

3-1.セルフチェック項目

以下の項目に多く当てはまる人ほど、胸郭出口症候群になっている可能性があります。

  • 手や指・腕に鈍痛が走る
  • 手が冷たくなる
  • 手に力が入らず、ものを落とすことが多い
  • 肩や腕がすぐにだるくなる
  • 首や肩のこりがひどい
  • 肩こりと同時に頭痛が起きる

また、簡単にできるセルフチェック法があるので紹介します。最初に、両手を横に広げ、肘から上を体側に曲げてください。肘を曲げた状態のまま手のひらを正面に向けます。そのまま手をグーパーグーパーと3秒間ほどくり返しましょう。もし、この状態で手にしびれや冷たくなる方は、胸郭出口症候群の疑いがあります。

3-2.注意点

「時間がたてばすぐに治る」「一時的なものだろう」と思っていては、症状が悪化してしまいます。できるだけ早めに対処したほうが良いので、当てはまる症状があれば病院に行ってください。骨や筋肉に関係しているため、整形外科を受診します。放置するよりも病院で診てもらったほうが安心です。

4.胸郭出口症候群のセルフケア

胸郭出口症候群の治療は、自分でおこなうケアも大切なポイントです。セルフケアの内容について詳しく説明します。

4-1.運動・ストレッチ

運動やストレッチは筋肉をやわらかくする効果的な方法です。特に、僧帽筋や肩甲拳筋(けんこうきょきん)を強化する運動に力を入れてください。僧帽筋は首・肩まわりだけでなく、背中の中央部まで広がっている筋肉です。そして、肩甲拳筋(けんこうきょきん)は肩甲骨にくっついている筋肉で、肩甲骨を引き上げる役割を持っています。それぞれの筋トレ・ストレッチ法を以下にまとめてみました。また、筋肉がやわらかくなるお風呂あがりに、ラジオ体操や開脚などの簡単なストレッチを続けると良いでしょう。

<僧帽筋の場合>
●シュラッグトレーニング

  1. 肩幅に足を開き、背筋をまっすぐにして立つ
  2. 肩をすくめるようなイメージで真上に引き上げ、肩甲骨を下げるようにゆっくりともとの位置に戻す
  3. 同じ動きを15回ほどくり返す

●ストレッチボールを使った肩甲骨トレーニング

  1. うつぶせで両手を前に伸ばし、ストレッチボールの上に手を置く
  2. 肩に力を入れずにストレッチボールを手前に引き、奥へ押す
  3. 滑らかに20回ほどくり返す

<肩甲拳筋(けんこうきょきん)の場合>
●簡単にできるストレッチ法

  1. 片方の手を腰まわりにまわし、もう片方の手で後頭部ななめ上を押さえる
  2. 頭を押さえている手をななめ下へ引っ張る
  3. 肩甲拳筋あたりが伸びているのを感じたら数十秒間維持する

●ダンベルを使った筋トレ

  1. 無理のない重さのダンベルを持ち、肩と腕の力を抜く
  2. 両肩をすくめるように肩甲骨をあげる(このとき、肘を曲げすぎないように注意)
  3. 肩甲骨をあげたらゆっくりともとの位置に戻す

4-2.腹式呼吸

腹式呼吸も有効なセルフケアのひとつです。腹式呼吸は自然と筋肉がゆるみ、リラックスできるため、予防にもつながります。テレビを見ながらでもできるやり方を紹介しましょう。

  1. イスに座り、背筋をピンッと伸ばす
  2. 片手を胸に、もう片方の手をおなかに置き、胸が動かないようにおなかをへこましながら息を吐く
  3. 10秒~30秒間ほどゆっくり吐き出した後、口を閉じて鼻からゆっくりと息を吸う

腹式呼吸はおなかの中に息を取り込む意識を持つことがポイントです。おなかで呼吸する感覚を覚えてください。リラックスしながらゆっくりと腹式呼吸をくり返してみましょう。

4-3.姿勢などの日常生活の改善点

普段から自分自身がどのような姿勢をしているのか確認してみてください。立っているときや座っているときに、猫背になっている人はすぐに改善しましょう。猫背やスマートフォンを見るときの前のめりは、胸郭出口症候群の原因です。背筋がピンッとまっすぐ伸びた良い姿勢を心がけてください。また、デスクワークなどの長時間の同姿勢も危険です。あいた時間は肩や体を動かすようにしてください。

4-4.してはいけないこと

悪い姿勢や不規則な生活習慣は症状を悪化させる要因です。昼夜逆転生活になっている・睡眠不足が続いている・運動不足になっている方は、日常生活の改善から始めてください。また、重い荷物を持ってはいけません。基本的に、肩や腕に負担がかかる行動は避けましょう。

5.胸郭出口症候群の治療法

セルフケアと同時に、専門医療施設で胸郭出口症候群の治療をすすめていきましょう。胸郭出口症候群の主な治療法や病院の選び方・検査と診断方法などについて詳しく説明します。

5-1.放置するとどうなるか

胸郭出口症候群を放置すると、症状が悪化して手術しなければならない状態になる可能性があります。たとえば、肋間隙(ろっかんげき)という部分が圧迫されている場合、第1肋骨を切除しなければなりません。最悪なケースになると、手・肩・腕が自由に動かせなくなってしまいます。

5-2.主な治療法について

胸郭出口症候群の主な治療法は、安静にすることと投薬療法です。基本的に、症状の悪化につながる動作を禁止して安静にしておかなければなりません。軽症の場合は僧帽筋や肩甲拳筋の強化運動訓練をおこない、サポーターなど背筋を正しい姿勢にする装具を使います。投薬療法に用いられるのは、ほとんどが消炎鎮痛剤です。血流改善剤やビタミンB1などを、投与することもあります。重症の場合は、肋骨の切除手術になるでしょう。

5-3.病院へ行くべき症状

手指や腕のしびれが長く続き、同時に頭痛やめまいなどがひどくなったときは病院へ行ってください。重い荷物が持てない・手に力が入らないという症状も要注意です。気になる症状があれば、できるだけ早めに受診したほうが良いでしょう。

5-4.病院の選び方

胸郭出口症候群の症状が現れたら、整形外科を受診してください。どの病院を選べば良いのかわからない場合は、以下のポイントに注目して選ぶと良いでしょう。

  • 肩・肘などの症状に詳しいか
  • アフターケアが充実しているか
  • 親身になって相談に乗ってくれるか
  • 丁寧に原因や治療法などを説明してくれるか
  • スタッフの対応が良いか

5-5.検査・診断方法

症状や病歴などから判断して推測することがほとんどです。誘発テストをして、胸郭出口症候群かどうか確かめる方法もあります。誘発テストの内容は多種多様です。主に、以下の内容が誘発テストになります。

  • モーレイテスト:鎖骨の上のくぼみを指で押し、しびれや痛みが起きるか確認する
  • アドソンテスト:痛みやしびれがある腕の方向に頭を回転させ、動脈の脈拍をはかる。脈拍が弱い、消失する場合は疑いアリ
  • ライトテスト:肩をあげて後ろへ反らし、動脈の脈拍をはかる。脈拍が弱い、消失する場合は疑いアリ

ほかにも、血管造影やMRI血管造影などの画像検査もおこないます。

5-6.薬について

病院で処方される薬は、多くが鎮痛剤です。鎮痛剤は痛みをやわらげ、発熱を抑えることができます。ただし、痛みの根本的な原因を改善できる薬ではありません。あくまで、生活に支障が出るのを防ぐこと・別の痛みの発生を防ぐことを目的に処方されます。体質に合わない方は、副作用で胃が荒れることもあるのです。どのような薬を使うのか、どんな効果や副作用があるのか、きちんと説明を受けてから服用してください。

5-7.注意点

医療施設でおこなう治療と同時に、自分でできるケアも毎日続けることが大切です。専門的な治療をしっかりしていても、姿勢が悪かったり、生活習慣が乱れていたりすると、症状も改善できません。セルフケアと専門的な治療を同時におこなうからこそ、症状をやわらげることができます。

6.胸郭出口症候群にかんしてよくある質問

胸郭出口症候群にかんしてよくある質問を5つピックアップしました。

6-1.胸郭出口症候群になりやすい人とは?

重い荷物を持つ仕事をしている人・首が長い人・なで肩の人が胸郭出口症候群になりやすい人です。首や肩の筋肉が固まりやすい環境にいる人ほど、症状が起きやすいといえます。特に、20代や女性の方によく見られるようです。

6-2.手のひらが白くなるのはなぜか?

手のひらが白くなるのは血行障害が起きているあかしです。血が通わなくなっているため、皮膚が青白くなります。手のひらが白くなると同時に、腕をあげる動作がきつい場合は胸郭出口症候群になっている可能性が高いでしょう。

6-3.温熱治療・療法の効果とは?

胸郭出口症候群の治療法には、温熱治療・温熱療法があります。血行をうながすことでこり固まった筋肉がやわらかくなり、症状がやわらぐのです。しかし、痛みをやわらげるだけで、根本的な解決にはなりません。

6-4.胸郭出口症候群の予防策とは?

症状が軽いうちに、いち早く予防となる方法を実践することが大切です。たとえば、腕や肩をあげるような動作や姿勢をしない・重い荷物を持ち上げない・胸や脇をしめつける衣類を着ないことが挙げられます。普段から動作や姿勢に気を配りましょう。

6-5.手術はリスクが高いって本当?

状態が悪化している場合、手術をしなければなりません。しかし、手術はリスクを抱えることになります。症状や状態に合った手術内容でなければならない・第1肋骨を切り取っても再発するケースもあるなどがデメリットです。実際に、手術をしても症状が改善できず、腕があげられなくなったという方もいます。原因や状態をきちんと把握して、適切な治療を受けることが大切です。また、手術をする場合は実績のある病院を選び、信頼できる医師に依頼しましょう。

まとめ

いかがでしたか? 胸郭出口症候群は手指や腕にしびれが起き、自由に動作ができなくなる状態のことです。放置していると、症状が悪化し、完全に腕があげられなくなることもあります。激しい痛みや頭痛・めまいも併発する恐れがあるため、できるだけ早めに治療を始めなければなりません。まずは、原因を突き止めて適切な治療法を見つけてください。また、医療施設における治療だけでなく、セルフケアを続けることも大切なポイントです。規則正しい生活習慣や運動・ストレッチを心がけ、少しずつ症状を改善していきましょう。

アタナハクリニック院長 矢崎 智子

監修者

矢崎 智子
アタナハクリニック院長
日本産科婦人科学会認定医/高濃度ビタミンC点滴療法学会理事/世界アンチエイジング学会認定医/日本内分泌学会・国際オーソモレキュラー医学会・病巣疾患研究会会員/日本線維筋痛症学会会員

1969年長野県生まれ。平成6年杏林大学医学部卒。産婦人科医としての経験を積んだあと、2005年11月、分子整合栄養医学に基づく栄養療法と東洋医学を中心とした統合医療をおこなうクリニックハイジーアを開設。関節リウマチや線維筋痛症、慢性疲労症候群、摂食障害など、通常治療困難とされる疾患や、不妊症などの婦人科疾患の治療において豊富な臨床経験を持つ。日本では数少ない機能性医療の専門家であり、最も経験豊富な一人。

平成24年、医療とヒーリングの統合を目指し、アタナハクリニックを開設。現在はキネシオロジー(筋肉反射テストを使ったセラピー)の一種であるインテグレートヒーリング(IH)を中心とした統合医療を行なっている。

著書
なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病

雑誌掲載歴
2014年:『ゆほびか(6月号)』『スターピープル(vol49)』『スターピープル(Vol.48)』
2013年:『トリニティ(Vol.48)』
2011年:『日経ヘルス(1月号)』
2010年:『VoCE(12月号)』『AERA with BABY』『anan(1月20日号)』
2009年:『クロワッサン(6月10日号)』『クロワッサン(1月25日号)』