妊娠中毒症の症状

妊娠中毒症の症状は? 原因・治療法・予防法について徹底解析!

アタナハクリニック 院長 矢崎智子

記事監修
アタナハクリニック 院長 矢崎智子
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妊娠するとおなかが張る・つわりが起きる・下痢になりやすくなるなど、さまざまな体の変化が見られます。妊娠による体調変化は、ほとんどの妊婦が経験することなので心配にはおよびません。しかし、中には母体や胎児へ悪影響をおよぼす変化もあります。そのうちの1つが「妊娠中毒症」です。妊娠中毒症が重症化すると、母子ともに大きなリスクがのしかかるためすぐに対処しなければなりません。

そこで本記事では、妊娠中毒症の基礎知識やリスク・原因・治療法・予防法について詳しく説明します。

  1. 妊娠中毒症とは?
  2. 妊娠中毒症のリスク
  3. 妊娠中毒症の原因
  4. 妊娠中毒症の治療法
  5. 妊娠中毒症の予防法
  6. 妊娠中毒症に関してよくある質問

この記事を読むことで、妊娠中毒症による症状を緩和するために必要な情報を知ることができます。妊娠中毒症が気になる方や治したい方・予防したい方はぜひチェックしてください。

1.妊娠中毒症とは?

妊娠中に何かしらの原因によって血圧があがり、さまざまな症状が起きることを妊娠中毒症といいます。高血圧になることで、尿たんぱく・血管障害・臓器障害などを発症するのです。従来は妊娠中に現れるすべての症状を含め妊娠中毒症と呼ばれていました。しかし、現在は高血圧によって悪影響が出ている症状のことを指しています。

1-1.妊娠高血圧症候群

妊娠中毒症は別名「妊娠高血圧症候群」とも呼ばれています。2005年までは妊娠中毒症と呼ばれていましたが、日本産婦人科学会によりその年に改名されました。中毒症といっても、症状の原因となる毒が存在しないことが改名理由です。また、妊娠中毒症は高血圧・たんぱく質・浮腫(ふしゅ)のどれか1つ以上当てはまる症状とされています。一方、妊娠高血圧症候群は高血圧が必ず伴うものです。

1-2.血圧との関係

妊娠中毒症は高血圧かどうかで判断される症状です。血圧が最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上が高血圧といえます。高血圧になると体に必要なたんぱく質が尿として出てしまうため、尿たんぱくが起きるというわけです。中毒症と診断された方は検診の際、尿検査ではたんぱく質の値が+になっているでしょう。よって、赤ちゃんに必要な栄養素を与えることができなくなってしまいます。

1-3.妊娠中毒症の症状

妊娠中毒症の主な症状は、高血圧・尿たんぱく・むくみです。先ほどもお話したとおり、妊娠中毒症は血圧の上昇によって起こりやすくなります。もともと、妊娠中は赤ちゃんに栄養を送るため、血圧が通常よりも高めです。妊娠中の血圧は最高血圧130mmHg以内、最低血圧85mmHgといわれています。

この数値よりも血圧が高い場合、妊娠中毒症の発症率が高くなるでしょう。乱れた生活習慣や食生活も高血圧と関係しています。そして、尿たんぱく質も代表的な症状です。

妊娠中毒症になると腎臓機能が低下するため、たんぱく質が漏れやすい状況になってしまいます。尿たんぱく質が30mg/dl以上(+)の場合は陽性です。また、むくみがなかなか取れないのも妊娠中毒症の症状となり、体の組織に余計な水分がたまっています。

1-4.いつごろ起こるのか?

妊娠20週目~分娩(ぶんべん)後12週の間に起こりやすいといわれています。また、妊娠20~32週以内で発症した妊娠中毒症を早期型といい、妊娠32週以降に発症したものは遅発型です。妊娠中毒症の症状が起こり始めた時期によって治療法は異なります。妊娠中毒症の場合は早発型のほうが重症化する傾向にあるのです。

妊娠中毒症は妊娠中に高血圧によって悪影響が出ている症状のことなんですね。
主な症状は、高血圧・尿たんぱく・むくみです。起こる時期は、妊娠20週目~分娩後12週の間といわれています。

2.妊娠中毒症のリスク

妊娠中毒症のリスクをしっかり把握しておかなければ正しい対処ができません。妊婦・胎児への影響について、それぞれ詳しく説明します。

2-1.妊婦への影響

命を宿している妊婦は、通常よりも敏感な状態になっています。そのため、少しの変化でも体調に大きな悪影響が出るものです。妊娠中毒症の影響で最も怖いのが、後遺症と帝王切開のリスクになります。

2-1-1.後遺症

重症の妊娠中毒症を起こしている場合、出産後も高血圧が続くという後遺症のリスクを負っています。症状が重いほど出産後も影響が出てしまうのです。ほかにもけいれん発作・脳出血・肝臓や腎臓の機能障害・HELLP症候群などを併発する可能性があります。

2-1-2.帝王切開

重症の妊娠中毒症の場合は子宮や胎盤での血液が流れにくくなります。そのため、赤ちゃんにきちんと酸素と栄養が行き渡らなくなるのです。その結果、子宮収縮が起きて胎児へ悪影響を与えてしまいます。胎児の命を守るためにも、予定日より早く取り出すことも多いのです。帝王切開は母子ともに危険から守る選択肢でもあります。

2-2.胎児への影響

おなかにいる赤ちゃんは胎盤を通して母体から栄養や酸素を吸収しています。しかし、妊娠中毒症になると、十分に行き渡らずに栄養不足・酸素不足に陥りやすくなるのです。その結果、赤ちゃんが十分に育たなくなる胎児発育不全、普通よりも体重が少ない赤ちゃんが生まれる低出生体重児になる可能性があります。最悪なケースの場合、赤ちゃんが子宮内で亡くなることもあるのです。

後遺症と帝王切開のリスクがあるんですね。
妊娠中は少しの変化でも体調に大きな悪影響が出るものです。リスクについてしっかり把握して正しい対処ができるようにしましょう。

3.妊娠中毒症の原因

それでは、妊娠中毒症の原因は一体何なのでしょうか。主な原因や起こりやすい人・発症率について詳しく説明します。

3-1.主な原因

現在、妊娠中毒症の原因ははっきりとわかっていません。しかし、実際に症状が起きている人に共通していることがあります。それは、妊娠にうまく対応できない人です。妊娠によって起こる体の変化についていけず、胎盤が形成される妊娠初期に母体が対応できません。そのため、後期になってから症状となって現れるというわけです。

3-2.起こりやすい人

妊娠中毒症の原因は明確になっていませんが、なりやすい人はいくつか挙げられます。たとえば、糖尿病・高血圧・腎臓病の人、過去に妊娠中毒症になった人、過剰なストレスを感じている人、不規則な生活習慣を送っている人などです。また、家族に高血圧がいるという方も妊娠中毒症になりやすいといわれています。現在でも妊娠中毒症についてさまざまな研究がすすんでおり、最近では母体と胎児をつなぐ胎盤で異常な物質が何かしらの原因で生まれ、妊娠中毒症を引き起こしているのではないかと考えられているようです。

3-3.発症率

妊娠中毒症は全妊婦のおよそ3~7%が発症するといわれています。特に、35歳以上の高齢出産や15歳以下の若年出産はほかの病気を併発しやすくなる傾向があるでしょう。高齢出産は体に大きな負担をかけることになるため、糖尿病や高血圧が併発しやすくなります。若年出産は胎児を育てるための母体が整っていないため、妊娠中毒症の症状が出やすいのです。

原因ははっきりとわかっていないんですね。
原因は明確になっていませんが、症状が起きている人に共通点があります。糖尿病・高血圧・腎臓病の人や、不規則な生活習慣を送っている人などはなりやすいようです。

4.妊娠中毒症の治療法

実際に妊娠中毒症を起こした場合、どうすれば改善できるのでしょうか。主な治療法と軽症・重症場合について詳しく説明します。

4-1.主な治療法

基本的に妊娠中毒症の治療法は妊娠期間と症状によって異なりますが、代表的な治療法は食事療法と薬物療法になるでしょう。それぞれの内容について説明します。

4-1-1.食事療法

妊娠中毒症と判明した場合、まずは安静にしておかなければなりません。高血圧によって起こる症状となるため、塩分控えめや低カロリーなどの食事を心がけることが大切です。たんぱく質が胎盤に吸収されずにそのまま体外へ出ていってしまいます。そのため、高たんぱく質の食事を中心に摂取してください。高たんぱく質かつ低カロリーの食材といえば、とり肉・卵・マグロ赤身・サケ・エビ・いか・納豆・豆腐などが挙げられます。

4-1-2.薬物療法

けいれんや高血圧を抑制する薬を用いることもあります。ただし、薬物療法は妊娠中毒症の根本的な解決になりません。一時的に症状を緩和するものだと思ってください。また、高血圧に対する薬を服用することで赤ちゃんに悪影響を与えることもあります。そのため、病院できちんと検査してもらい、症状やおなかの状態に合った薬を服用しなければなりません。

4-2.軽症の場合

軽症の場合は、塩分制限などの食事療法や生活習慣の改善・安静にすることが基本的な治療法です。私生活に注意を払うことで、妊娠中毒症の症状が緩和できる可能性があります。また、できるだけ精神的ストレスを感じない環境の中で過ごしてください。心と体を一緒に休ませてあげることが大切です。正しい食生活と規則正しい生活習慣を心がけておけば、症状の悪化を防ぐことができます。

4-3.重症の場合

重症の場合は、医師による指導のもと食事療法や薬物療法などを行います。状態によっては血圧を抑える降圧薬・けいれん発作を防ぐ硫酸マグネシウムを投与することもあるでしょう。また、妊娠週数が足りていない場合でも母体に危険があると判断されれば帝王切開を行うこともあります。その人に起きている症状やおなかの状態を見ながら、入院・手術という判断が下されるでしょう。不安な方は、すぐに医師と相談してください。

4-4.注意点

妊娠中毒症は症状が悪化するほど母子ともに危険が高まります。そのため、できるだけ早めに対処しなければなりません。重症の場合は点滴注射をする、妊娠週数が早い場合は赤ちゃんの成長を待つなど治療方法はさまざまです。起きている症状から自分で判断せず、まずは担当の医師に相談してください。どんな小さなことでも不安な点があればすぐに伝えましょう。早期治療が悪化を防ぐポイントです。

5.妊娠中毒症の予防法

妊娠中毒症の予防は食生活・睡眠・ストレス解消など日々の生活が大きなポイントになります。一体どうすれば予防できるのか、具体的に見ていきましょう。

治療は食事療法と薬物療法がメインなんですね。
軽症であれば正しい食生活と規則正しい生活習慣を心がけておけば、症状の悪化を防ぐことができます。重症の場合は降圧薬や硫酸マグネシウムを投与することもあります。

5-1.肥満

体脂肪が蓄積されるほど心臓が圧迫され、血圧を上昇させます。肥満体型の人は通常体型よりも高血圧になりやすく、妊娠中毒症を引き起こす危険性があるのです。体脂肪を蓄積させないためにも、日々の食生活に注意してください。ただし、痩せすぎも疲労やストレスをためこみ、妊娠中毒症になる可能性があるので要注意です。無理なダイエットはしないようにしましょう。

5-2.食生活

ミネラル・ビタミン・たんぱく質と栄養バランスが整っている食生活を心がけていきましょう。食事はおなかの赤ちゃんに栄養を与える大切なものです。きちんと栄養のある食事を摂(と)っていかなければ、赤ちゃんに栄養が行き渡りません。特に、高たんぱく質かつ低カロリーの食材を中心に摂(と)ってください。甘いものやレトルト食品ばかり食べていては栄養が偏ってしまうので要注意です。

5-3.ストレス

疲労やストレスをためこむと、自律神経が乱れてしまいます。自律神経は体をリラックスさせる副交感神経と緊張へと導く交感神経のバランスで成り立っているものです。しかし、2つの神経バランスが乱れると体が緊張状態となる交感神経が活性化します。その結果、腎臓機能が低下する・血圧があがるという症状が出てくるのです。できるだけ、ストレスとは縁のない生活を心がけてください。

たとえば、アタナハクリニックでは直観治療に力を入れています。直観治療とは超感覚能力を用いて、体内の臓器の物理的・エネルギー的な情報を読み取りながら行う治療のことです。自分自身の病気や症状と向き合うことを軸に、根本治療を行っています。

5-4.そのほか

昼夜逆転生活や睡眠不足という不規則な生活習慣も悪影響をおよぼします。妊娠中毒症の予防は、規則正しい生活習慣が基本です。また、かかりつけの医師による健診をしっかり受診すること・適切な周産期管理を受けることも予防法になります。

5-5.注意点

水分摂取制限を自分でする・市販の利尿薬を使うという予防策は逆効果になる可能性があります。症状が悪化するだけでなく、血栓症のリスクを高めてしまいやすいのです。血栓とは、血液の流れが悪いことで起きる血管の中の塊を指しています。血流を防ぐ原因となるため、動脈硬化や不整脈を起こす要因です。自分で判断するのではなく、医師の診断を仰いでください。

食生活・睡眠・ストレス解消など予防につながるんですね。
はい。自己判断での水分摂取制限や利尿薬の服用は逆効果になることもあるため、自分で判断するのではなく、医師の診断を仰いでください。

6.妊娠中毒症に関してよくある質問

妊娠中毒症に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.普通のむくみとの違いは?
A.妊娠中毒症のむくみはなかなか取れません。特に、妊娠後期は血液循環が増えるため、水分がたまりやすく、むくみが起きやすくなるでしょう。朝起きてもむくみが取れない場合は、すぐに担当の医師に相談してください。

Q.軽症と重症の境目は?
妊娠中毒症の軽症と重症は、収縮期血圧・拡張期血圧・尿たんぱくの量で判断します。それぞれの基準となる値を以下にまとめてみました。

軽症の場合

  • 収縮期血圧:140mmHg~160mmHg以内
  • 拡張期血圧:90mmHg~110mmHg以内
  • 尿たんぱく:300mg/日~2,000mg/日以内

重症の場合

  • 収縮期血圧:160mmHg以上
  • 拡張期血圧:110mmHg以上
  • 尿たんぱく:2,000mg/日以上

Q.出産後、妊娠中毒症は改善できるのか?
A.多くの場合は出産後に症状が緩和します。ただし、重症の場合は産後も血圧が高くなる・尿たんぱくが出続けるなど後遺症が出る可能性もあるでしょう。その場合は血圧を下げる薬を服用するなどして対処しなければなりません。症状が3か月以上続く場合はほかの病気が考えられます。

Q.受診すべきタイミングは?
A.妊娠中毒症は高血圧ではなかった人が発症するケースもあります。妊娠中、今までにない症状が長く続いたり、血圧が高くなったりしたときはすぐに受診してください。大したことのない症状でも一度医師に相談することが早期治療につながります。

Q.妊娠前から降圧剤を飲んでいる場合はどうすべきか?
A.妊娠中は通常よりも血圧があがるため、降圧剤を飲む必要のないケースがほとんどです。また、薬を服用しながら妊娠生活を送る方もいます。ただし、アンギオテンシン変換酵素などの薬を服用している方は薬を変更しなければなりません。胎児発育不全や常位胎盤早期剥離など、赤ちゃんに悪影響をおよぼさないか、臓器障害が起きていないかなど検査しておきましょう。妊娠が発覚したときはすぐに医師へ相談してください。そして、妊娠初期は4週間に1回、24週目以降は1~2週間に1回の健診を受けましょう。

妊娠中毒症で心配だったことが色々とわかって助かりました。
一番の予防は規則正しい生活習慣です。この記事を早期治療に役立ててくださいね。

まとめ

いかがでしたか? 妊娠中の体は自分1人のものではありません。おなかの中には大切な命が宿っています。ホルモンバランスの変化による影響やつわり・おなかの張りなど妊娠ならではの症状が起きるでしょう。しかし、中には血圧が急激に高くなる・高血圧の状態やむくみが続くなど、妊娠中毒症という異常を示す症状も現れます。定期的に検診を受け、おなかの状態をきちんと確認していきましょう。

また、日ごろの生活習慣にも気をつけてください。妊娠中毒症の予防は、規則正しい生活習慣が基本となります。早期治療のためにも、事前に妊娠中毒症の知識を押さえておきましょう。

アタナハクリニック院長 矢崎 智子

監修者

矢崎 智子
アタナハクリニック院長
日本産科婦人科学会認定医/高濃度ビタミンC点滴療法学会理事/世界アンチエイジング学会認定医/日本内分泌学会・国際オーソモレキュラー医学会・病巣疾患研究会会員/日本線維筋痛症学会会員

1969年長野県生まれ。平成6年杏林大学医学部卒。産婦人科医としての経験を積んだあと、2005年11月、分子整合栄養医学に基づく栄養療法と東洋医学を中心とした統合医療をおこなうクリニックハイジーアを開設。関節リウマチや線維筋痛症、慢性疲労症候群、摂食障害など、通常治療困難とされる疾患や、不妊症などの婦人科疾患の治療において豊富な臨床経験を持つ。日本では数少ない機能性医療の専門家であり、最も経験豊富な一人。

平成24年、医療とヒーリングの統合を目指し、アタナハクリニックを開設。現在はキネシオロジー(筋肉反射テストを使ったセラピー)の一種であるインテグレートヒーリング(IH)を中心とした統合医療を行なっている。

著書
なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病

雑誌掲載歴
2014年:『ゆほびか(6月号)』『スターピープル(vol49)』『スターピープル(Vol.48)』
2013年:『トリニティ(Vol.48)』
2011年:『日経ヘルス(1月号)』
2010年:『VoCE(12月号)』『AERA with BABY』『anan(1月20日号)』
2009年:『クロワッサン(6月10日号)』『クロワッサン(1月25日号)』