妊娠悪阻

妊娠悪阻とはどのような病気? 症状や治療法などを一挙解説

アタナハクリニック 院長 矢崎智子

記事監修
アタナハクリニック 院長 矢崎智子
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妊娠悪阻(にんしんおそ)とは、つわりが重症化した状態のことです。妊婦ならば誰でも発症する可能性があり、最悪の場合は、意識障害など深刻な症状が出ることもあります。また、つわりは妊娠をした方の多くが経験する体の不調ですが、どこまでがつわりでどこからが妊娠悪阻なのか分からない、と不安に思っている方もいることでしょう。

そこで、今回は妊娠悪阻の症状や治療方法を解説します。

  1. つわりの基礎知識
  2. 妊娠悪阻の症状や診断基準について
  3. ​妊娠悪阻を悪化させない方法
  4. 妊娠悪阻に対するよくある質問

この記事を読めば、病院を受診する目安などもよく分かることでしょう。妊娠が判明したという方や妊活をしている方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。

1.つわりの基礎知識

はじめに、つわりの症状やメカニズムなどを解説します。つわりと妊娠悪阻は何が違うのでしょうか?

1-1.つわりって何?

つわりとは、妊娠4~12週目頃に起こる不快な症状の総称です。代表的な症状は嘔吐感や味覚の変化ですが、眠気・よだれ・嗅覚過敏・気分の落ちこみなどが現れる方もいます。妊婦の7割がつわりを経験し、中には出産直前まで続く方もいるのです。

1-2.つわりの原因は?

つわりの原因は、現在のところはっきりと分かっていません。また、経産婦よりも初めて妊娠をする人の方が重い傾向にあります。しかし、1人目は何事もなかったのに2人目の妊娠時には重いつわりに苦しんだという方もおり、一概に「経産婦はつわりが軽い」と言い切ることもできません。

また、ストレスがつわりを重症化させることもあります。

1-3.つわりと妊娠悪阻の違い

前述のとおり、妊娠悪阻はつわりが重症化した状態です。全妊婦の0.1~1%前後が発症するという説がありますが、正確な人数は把握されていません。つわりと妊娠悪阻の間に明確な線引きはされていませんが、十分な栄養が取れずに日常生活に支障が出るようになると、妊娠悪阻と診断されることもあります。妊娠悪阻の診断基準については、次の項で詳しく説明しましょう。

1-4.妊娠悪阻になりやすい人はいるの?

妊娠悪阻は、妊娠したら誰でも発症する可能性があります。妊娠した年齢や胎児の性別などは関係ありません。ただし、双子などの多胎妊娠や胞状奇胎(ほうじょうきたい)などの異常妊娠をしている場合は、妊娠悪阻になりやすい傾向にあります。また、妊娠悪阻を発症した方が再び妊娠をした場合も、妊娠悪阻になる可能性が高いでしょう。

2.妊娠悪阻の症状や診断基準について

この項では、妊娠悪阻の症状や診断基準について解説します。どのような症状が現れるのでしょうか?

2-1.妊娠悪阻の症状とは?

妊娠悪阻になると、激しい吐き気が起こります。吐き気はつわりの代表的な症状ですが、妊娠悪阻の場合は水を飲んでも吐いてしまうような状態が続くでしょう。人によっては胃液を吐き続けたため、消化器官の粘膜が荒れてしまう方もいます。体重は減少し、脱水症状の危険性も出てくるのです。

食事が食べられない期間が続くと、尿の中にタンパクやケトン体が出てきます。ケトン体とは、肝臓が体内に蓄えられている脂肪を分解した際に、現れる物質です。私たちは通常食べ物からエネルギーを得るので、ケトン体が尿の中に出ることはありません。ケトン体は体が飢餓状態になっている証拠であり、放っておくと代謝異常を引き起こします。そのため、尿検査でケトン体が検出されると、点滴治療が行われることが一般的です。

妊娠悪阻がさらに進むと、幻覚や幻聴といった脳障害が現れることもあります。このような症状が出ると重症妊娠悪阻と診断され、母体を守るために中絶も視野に入れた治療が行われるでしょう。とはいえ、ここまで重症化する妊娠悪阻はごくまれです。

2-2.妊娠悪阻の診断基準

妊娠悪阻は

  • 嘔吐の回数
  • 体重の減少度
  • 尿中ケトン体の陽性反応

の3つで診断されます。毎日嘔吐があり、短期間で体重が5%以上減少した場合は、ケトン体の陽性反応が出ていなくても、点滴治療が行われることもあるでしょう。尿中ケトン体の陽性反応があり、体重の減少が激しい場合は、入院をして治療を行うこともあります。

2-3.妊娠悪阻の治療方法

妊娠悪阻の治療方法は、ブドウ糖液の点滴をして安静を保つことです。ブドウ糖は体内に入ると即エネルギーに変わるので、肝臓が体内の脂肪を消費してエネルギーを作り出す必要もなくなります。体内にエネルギーが入れば、症状が一気に回復する方もいるのです。

一般的につわりは12週を過ぎれば落ちついてくる傾向にあります。症状がひどい場合は点滴で栄養を補給しつつ、入院をして安静を保つ治療が行われることが一般的です。

2-4.子どもへの影響について

母体が栄養不足になると、胎児の健康状態が心配になる方もいると思います。しかし、現在のところ妊娠悪阻になったからといって、子どもに悪影響が出たという報告はありません。しかし、あまりにも母体が栄養不足だと、子どもが低体重で生まれる可能性はあります。ですから、つわりが重かったら遠慮せずに病院で治療を受けましょう。

3.妊娠悪阻を悪化させない方法

この項では、妊娠悪阻を悪化させない方法の一例を紹介します。参考にできそうなものは、参考にしてください。

3-1.がまんしすぎない

前述したとおり、妊娠悪阻は嘔吐感が強く食事が食べられなくなることによって悪化していきます。つわりの不快感を劇的に改善する薬はありませんが、栄養不足は点滴などで改善が可能です。水さえも吐いてしまうような状態が3日以上続いている場合は、かかりつけの産婦人科医に相談してください。

3-2.食べられるものを食べる

妊娠悪阻になってしまったら、食べられるものを食べるのが一番です。また、無理に食べようとするとそれ自体がストレスになります。食べられるものを、食べられるときに食べましょう。

3-3.入院ができるなら入院する

妊娠悪阻の治療は、栄養を点滴などで取りながら安静にしていることです。症状が軽い場合は通院治療もできますが、症状の改善が見られない場合は入院をしましょう。家では安静にしているにも限度があります。

3-4.ストレスをためない

妊娠は、体の中で新たな命を育むことです。妊娠初期の頃であっても、体の中は大きく変化しています。そのため、今まで簡単にできていたことが難しくなったりすることもあるでしょう。ですから、妊娠中は無理をしないように心がけてください。仕事を続けても問題はありませんが、妊娠前よりも仕事の量はセーブしましょう。

また、インターネット上にもつわりにかんするネガティブな情報があふれています。それを読んでいると、恐怖感を覚える方もいるでしょう。現在の医学では、つわりや妊娠悪阻を予防する方法はありません。しかし、妊娠悪阻を恐れてうつうつとした気持ちで過ごせば、ストレスもたまってしまいます。不安なことがあればかかりつけ医に相談をして、できるだけ前向きな気持ちで過ごしましょう。

4.妊娠悪阻に対するよくある質問

Q.妊娠悪阻が急激に悪化することはありますか?
A.妊娠悪阻自体が急激に悪化することはありませんが、脱水症状を起こした場合、目まいや意識消失などの症状が急に発生することもあるでしょう。口の中が渇き、めまいやだるさを感じたらすぐにかかりつけの産婦人科を受診してください。

Q.特定のものしか食べられない場合、それだけを食べ続けて問題はありませんか?
A.大丈夫です。食べられるものを食べてください。

Q.妊娠悪阻が生まれる直前まで続く可能性はありますか?
A.絶対にないとは言い切れませんが、ごくわずかです。

Q.妊娠悪阻の治療は、健康保険が適用されますか?
A.はい。病気ですから適応されます。

Q.吐きすぎて胃や食道が荒れてしまった場合は、薬を飲んでも大丈夫ですか?
A.はい。産婦人科で薬を処方されますので、飲んでください。

5.おわりに

いかがでしたか? 今回は妊娠悪阻の症状や治療法について解説しました。妊娠は病気ではありませんが、病気でないからこそ、薬などで症状を改善させることはできません。体力をつけて症状を軽減させることしかできないのです。ですから、妊娠をしたら無理をせずに体をいたわりましょう。つわりで水も飲めないような状態が続いている場合は、できるだけ早くかかりつけの産婦人科医に相談してください。早めに治療を開始した方が、症状も悪化しにくいでしょう。

アタナハクリニック院長 矢崎 智子

監修者

矢崎 智子
アタナハクリニック院長
日本産科婦人科学会認定医/高濃度ビタミンC点滴療法学会理事/世界アンチエイジング学会認定医/日本内分泌学会・国際オーソモレキュラー医学会・病巣疾患研究会会員/日本線維筋痛症学会会員

1969年長野県生まれ。平成6年杏林大学医学部卒。産婦人科医としての経験を積んだあと、2005年11月、分子整合栄養医学に基づく栄養療法と東洋医学を中心とした統合医療をおこなうクリニックハイジーアを開設。関節リウマチや線維筋痛症、慢性疲労症候群、摂食障害など、通常治療困難とされる疾患や、不妊症などの婦人科疾患の治療において豊富な臨床経験を持つ。日本では数少ない機能性医療の専門家であり、最も経験豊富な一人。

平成24年、医療とヒーリングの統合を目指し、アタナハクリニックを開設。現在はキネシオロジー(筋肉反射テストを使ったセラピー)の一種であるインテグレートヒーリング(IH)を中心とした統合医療を行なっている。

著書
なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病

雑誌掲載歴
2014年:『ゆほびか(6月号)』『スターピープル(vol49)』『スターピープル(Vol.48)』
2013年:『トリニティ(Vol.48)』
2011年:『日経ヘルス(1月号)』
2010年:『VoCE(12月号)』『AERA with BABY』『anan(1月20日号)』
2009年:『クロワッサン(6月10日号)』『クロワッサン(1月25日号)』