妊娠糖尿病は自覚症状が少ない!母体や胎児への影響や治療法は?

アタナハクリニック 院長 矢崎智子

記事監修
アタナハクリニック 院長 矢崎智子
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「妊娠糖尿病の疑いがある」「どのような症状があるのか知りたい」とお悩みではありませんか? 妊娠糖尿病とは、妊娠の影響によって引き起こされる糖尿病のことです。10%前後の妊婦が診断される病気であり、母体と胎児にさまざまな合併症が起こる可能性があります。しかし、早期発見と適切な治療により、問題なく出産できる妊婦がほとんどです。早めに対処できるよう、妊娠糖尿病について詳しく知っておきましょう。この記事では、妊娠糖尿病の原因や症状・治療法などをまとめてご紹介します。

  1. 妊娠糖尿病とはどんな病気なのか?
  2. 妊娠糖尿病の主な症状を紹介
  3. 妊娠糖尿病の治療法は3つ
  4. 妊娠糖尿病に関するよくある質問

この記事を読むことで、妊娠糖尿病になりやすい人の特徴や放置する影響・病院を受診するべきケースなどが分かるはずです。ぜひ参考にしてください。

1.妊娠糖尿病とはどんな病気なのか?

まずは、妊娠糖尿病の種類や原因・なりやすい人の特徴などをまとめました。

1-1.妊娠の影響によって糖代謝異常が起こる病気

妊娠糖尿病とは、妊娠の影響でインスリンの働きが低下し、糖代謝異常が起こる病気のことをいいます。私たちは食事を摂(と)ると血糖値が上がりますが、すい臓から分泌されるインスリンが作用することで血糖値が下がるのが通常です。しかし、妊娠糖尿病になるとインスリンが正常に作用しなくなり、血糖値が高いままになってしまいます。その結果、さまざまな合併症を引き起こしてしまうのです。

1-2.「妊娠糖尿病」と「糖尿病合併妊娠」がある

一般的に妊娠の糖代謝異常には「妊娠糖尿病」と「糖尿病合併妊娠」の2種類があります。「妊娠糖尿病」は妊娠中に発見、または発症した糖代謝異常のことをいい、もともと糖尿病だった人が妊娠した状態が「糖尿病合併妊娠」です。

1-3.インスリンの働きを妨害するホルモンが原因

妊娠中に胎盤から分泌されるホルモンに、インスリンの働きを妨害する作用があることが、妊娠糖尿病の原因と考えられています。妊娠中はホルモンバランスが大きく変化するため、インスリンが効きにくい状態になりがちなのです。そのため、妊娠中は食後の血糖値が上がりやすく、普段から注意が必要になります。

1-4.妊娠糖尿病になりやすい人の特徴

妊娠糖尿病は特に以下のような人がなりやすいといわれているため、注意してください。

  • 家族に糖尿病の人がいる
  • 肥満気味
  • 高齢出産
  • 妊娠中に急激な体重増加があった
  • 巨大児を出産したことがある

2.妊娠糖尿病の主な症状を紹介

早期発見・治療のためにも、妊娠糖尿病の主な症状について知っておきましょう。

2-1.自覚症状がほとんどない

妊娠糖尿病は自覚症状がほとんどありません。そのため、自分で気付くのではなく、妊婦検診で指摘される人が多いでしょう。その中でもよく見られる症状としては「のどが渇きやすい」「頻尿」などがありますが、これらは通常でも妊娠中に起こりやすい症状です。そのため、妊娠糖尿病であることに気付く人はほとんどいないでしょう。

2-2.母体に起こる合併症

妊娠糖尿病が進行すると、母体に「妊娠高血圧症」や「羊水量の異常」「肩甲難産」などの合併症が起こる可能性があります。早産や難産につながることも多いため、帝王切開になるケースも少なくないのです。そのほかにも、網膜症や腎症など糖尿病の合併症を引き起こすことも多くなっています。

2-3.胎児に起こる合併症

妊娠糖尿病は、胎児にも合併症を引き起こします。巨大児や奇形児のリスク上昇や、胎児機能不全・子宮内胎児死亡のほか、低血糖や多血症・黄疸(おうだん)などの原因にもなるのです。また、将来的に糖尿病やメタボリック症候群になる可能性も高くなります。

2-4.出産後に糖尿病を発症する可能性も

妊娠糖尿病の場合は、出産後、血糖値は正常に戻りますが、将来的に糖尿病を発症する恐れがあります。そのため、出産後も規則正しい生活を心がけることや、定期的に検診を受けることが大切です。

3.妊娠糖尿病の治療法は3つ

妊娠糖尿病の診断方法や受診すべきケース・主な治療方法についてご紹介しましょう。

3-1.血液検査で出た血糖値の数値によって診断される

妊娠糖尿病は、血液検査による血糖値の数値で診断される場合がほとんどです。数値が高い場合は「ぶどう糖負荷試験」と呼ばれる、ぶどう糖を口から摂取して血糖値の変化を確認する検査が行われます。結果が基準数値を上回った場合に、妊娠糖尿病と診断されることになるのです。

3-2.気になるときは早めに受診を

日本産科婦人科学会では、すべての妊婦に対して妊娠初期と妊娠中期に妊娠糖尿病の検査を行うことを推奨しています。そのため、通常通りに妊婦検診を受けていれば、特別自分から検査を申し出る必要はないでしょう。しかし、早期発見のためにも、少しでも気になる症状があるときは産婦人科医に相談することをおすすめします。特に、家族に糖尿病の人がいる場合などは、念のため早めに検査を受けておくと安心です。

3-3.治療法は「食事療法」「運動療法」「インスリン注射」の3つ

妊娠糖尿病の治療法には、主に「食事療法」「運動療法」「インスリン注射」の3つがあります。

3-3-1.食事療法

基本は食事療法です。血糖をコントロールするためには、バランスのよい食生活が必要不可欠になります。1日に必要な栄養量や、特に摂取するべき栄養素・理想的な食べ方などの指導を受けることが必要です。食後の急激な血糖値上昇を避けるために、1日の食事を4~6回に分けるよう勧められる場合もあります。

3-3-2.運動療法

食事療法と合わせて運動療法が行われる場合もあります。もちろん、妊娠中なので激しい運動はできませんが、適度な運動を取り入れることは血糖値を正常に戻すために効果的です。ウォーキングやマタニティヨガなど、妊婦でも負担なくできる運動を勧められるでしょう。

3-3-3.インスリン注射

食事療法や運動療法で効果がない場合は、インスリン注射による治療が行われます。必要に応じた量のインスリンを皮下注射し、血糖を管理するために行われるものです。出産後はインスリン投与量を減らしながら血糖値の経過を見ていくことになります。

3-4.出産後も規則正しい生活を心がけることが大切

前述したように、妊娠糖尿病と診断された人は、将来的に糖尿病を発症するリスクが高くなります。出産後、血糖値が正常に戻ってからも、引き続き規則正しい生活を送ることを心がけましょう。健康管理に気を付けながら、必ず定期的な健診を受けるようにしてください。

4.妊娠糖尿病に関するよくある質問

「妊娠糖尿病について知りたい」という人が感じる疑問とその回答をまとめました。

Q.妊娠糖尿病の治療には入院が必要でしょうか?
A.必ずしも入院が必要なわけではありません。しかし、食事療法や運動療法で効果が得られず、インスリンを使ってもうまく血糖値をコントロールできない場合は、入院が必要になる場合もあるでしょう。

Q.妊娠糖尿病と診断されても、普通分娩で出産することは可能ですか?
A.通常の妊婦に比べると帝王切開率は高くなりますが、普通分娩が可能な場合もあります。

Q.自宅で血糖値を測定することは可能ですか?
A.病院によっては、血糖測定器を購入して自分で血糖値を測定し、管理することを勧められる場合もあります。

Q.妊娠糖尿病で飲み薬が処方されることもあるのでしょうか?
A.飲み薬は胎児への安全性が確認されていないこともあり、処方されることはありません。

Q.血糖値を上げやすい栄養素にはどのようなものがありますか?
A.炭水化物や脂質・糖質・塩分・動物性たんぱく質などです。ご飯やパン・肉や揚げ物の摂(と)り過ぎには注意しましょう。

まとめ

妊娠糖尿病の症状や原因・治療法などをまとめてご紹介しました。妊娠糖尿病は気付かないうちに発症している可能性があります。普段から規則正しい生活を心がけ、きちんと妊婦検診を受けることが、早期発見につながるはずです。ぜひこの記事を参考にして、妊娠糖尿病について理解を深めてください。

アタナハクリニック院長 矢崎 智子

監修者

矢崎 智子
アタナハクリニック院長
日本産科婦人科学会認定医/高濃度ビタミンC点滴療法学会理事/世界アンチエイジング学会認定医/日本内分泌学会・国際オーソモレキュラー医学会・病巣疾患研究会会員/日本線維筋痛症学会会員

1969年長野県生まれ。平成6年杏林大学医学部卒。産婦人科医としての経験を積んだあと、2005年11月、分子整合栄養医学に基づく栄養療法と東洋医学を中心とした統合医療をおこなうクリニックハイジーアを開設。関節リウマチや線維筋痛症、慢性疲労症候群、摂食障害など、通常治療困難とされる疾患や、不妊症などの婦人科疾患の治療において豊富な臨床経験を持つ。日本では数少ない機能性医療の専門家であり、最も経験豊富な一人。

平成24年、医療とヒーリングの統合を目指し、アタナハクリニックを開設。現在はキネシオロジー(筋肉反射テストを使ったセラピー)の一種であるインテグレートヒーリング(IH)を中心とした統合医療を行なっている。

著書
なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病

雑誌掲載歴
2014年:『ゆほびか(6月号)』『スターピープル(vol49)』『スターピープル(Vol.48)』
2013年:『トリニティ(Vol.48)』
2011年:『日経ヘルス(1月号)』
2010年:『VoCE(12月号)』『AERA with BABY』『anan(1月20日号)』
2009年:『クロワッサン(6月10日号)』『クロワッサン(1月25日号)』