線維筋痛症とは? 診断基準となる圧痛点や治療方法などを詳しく解説

アタナハクリニック 院長 矢崎智子

記事監修
アタナハクリニック 院長 矢崎智子
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線維筋痛症を発症すると、全身に強い痛みを感じます。こわばりや睡眠障害なども併発するため、早めに医療機関を受診することが大切です。線維筋痛症の診断基準となる圧痛点や治療方法などを覚えておきましょう。

  1. 線維筋痛症とは?
  2. 線維筋痛症の症状
  3. 線維筋痛症の原因
  4. 線維筋痛症の診断基準となる圧痛点とは?
  5. 線維筋痛症の治療について
  6. 線維筋痛症でよくある質問

原因不明の痛みに悩んでいる方は、線維筋痛症の症状などを理解し、受診時の参考にしてください。また、診断方法についても併せて解説します。

1.線維筋痛症とは?

まず、線維筋痛症とはどんな病気か、なりやすい人や関連する病気などを見ていきましょう。

1-1.全身に痛みとこわばりを感じる病気

線維筋痛症は、全身に強い痛みとこわばりを感じます。しかし、医療機関を受診しても、専門医でなければ原因を特定できないことが多いものです。また、だるさ・疲労感・目や口の渇き・睡眠障害・うつなども併発しやすいため、日常生活に支障をきたすことがあるでしょう。ストレスが関連して発症するという説もあります。

1-2.中年以降の女性が好発する

線維筋痛症は、女性のほうが発症率が高いのです。男性に比べ、女性の患者数は5倍にも及びます。また、中年以降の女性が好発しやすく、55〜65歳の患者層が多いのが特徴です。

1-3.患者数は人口の1.7%にあたる

厚生労働省の調査によると、線維筋痛症を発症している患者は、人口の1.7%にあたる200万人程度とされています。しかし、患者数は年々増加傾向にあり、2011年の調査では、人口の2.1%が線維筋痛症を発症していることが分かりました。

1-4.実際に医療機関を継続受診している人は少ない

年々患者数が増加しているにも関わらず、専門医がいる医療機関を継続受診している人は、年間でわずか4,000人程度です。全身に痛みやこわばりを感じても、検査では原因が分からないことも多く、専門医がいる医療機関も限られているため、正確な診断ができない場合が多いことも関連しているのでしょう。

1-5.関連する病気や間違えやすい病気

線維筋痛症を発症すると、痛みに加えてだるさを感じるため、慢性疲労性症候群を併発することが多いものです。また、ストレスなど心理的な問題から発症するケースもあります。間違えやすいのは、リウマチや膠原病です。専門医を受診し、正確な診断を受けるようにしましょう。

2.線維筋痛症の症状

線維筋痛症の主な症状や、放置した場合のリスクなどをご紹介します。

2-1.主症状は全身の強い痛み

線維筋痛症の主症状は、全身の強い痛み・こわばり・疲労感です。痛みの感じ方は人それぞれ異なります。ズキズキ・ヒリヒリ・鈍い痛みなどの疼痛(とうつう)が広範囲に現れ、慢性化しやすいのが特徴です。こわばりは、関節や筋肉を中心に起こりますが、リウマチのような腫れや変形を伴いません。

2-2.睡眠障害や不定愁訴を併発する

睡眠障害は、体の痛みで眠りが浅くなることで起こります。睡眠不足により、日中は眠気やイライラを感じることがあるでしょう。疲れが取れず、常にだるさを感じるのが特徴です。痛みや睡眠障害などの影響で、ネガティブな思考になり、うつを併発することもあります。また、線維筋痛症の症状は理解されにくく、周囲から怠慢と受け取られてしまうことも、うつを引き起こす原因です。

2-3.症状に応じてステージは5つに分けられる

線維筋痛症の症状により、日常生活へ影響を及ぼす度合いが変わります。ステージは大きく分けて5つです。
ステージ1:11箇所以上の圧痛点があり、3か月以上続いている。日常生活に大きな支障はない。
ステージ2:手足など末端まで痛みが広がり、睡眠障害・不定愁訴・うつなどを発症する。日常生活にも影響が出始める段階。
ステージ3:強い痛みが続き、気候の変化でも痛みを感じるようになる。自力で生活するのが難しい。
ステージ4:寝たきり状態になり、体を動かすことができない。
ステージ5:激しい痛みが全身を襲い、膀胱(ぼうこう)や直腸などの内臓障害・目や口の乾燥・感染症などが併発する。日常生活を平穏に過ごすことができない。

2-4.放置すると寝たきりになる場合がある

2-3でご紹介したとおり、線維筋痛症はステージが上がるごとに症状が悪化します。放置した場合、症状が進行し、寝たきりになる可能性もあるのです。早期に受診して診断を受け、適切な治療で症状をコントロールするようにしましょう。

3.線維筋痛症の原因

線維筋痛症の原因は何かを考えていきましょう。

3-1.原因は分かっていない

線維筋痛症の原因は、まだはっきりと解明されていません。さまざまな要因が重なり、心身へ負荷がかかることで発症するなど、複数の説があります。

3-2.中枢神経の異常なども考えられる

猫背など普段から姿勢が悪い場合、体の歪(ゆが)みを招くことが多いでしょう。そのため、筋肉が中枢神経を圧迫し、痛みを引き起こしているのではないかという説もあります。また、ストレス・疲労の蓄積・手術などの外的要因なども発症するきっかけになると考えられているのです。

4.線維筋痛症の診断基準となる圧痛点とは?

線維筋痛症の診断は、圧痛点を基準に行います。圧痛点や具体的な診断方法を覚えておきましょう。

4-1.圧痛点とは?

圧痛点は、体に18箇所あります。日本線維筋痛症学会のガイドラインには、圧痛点が図解で掲載されているので参照してください。圧痛点は、トリガーポイントとも呼ばれています。

4-2.広範囲に圧痛点はある

圧痛点は、首・腕・背中・臀部(でんぶ)・足など広範囲にあるのが特徴です。圧痛点以外では、両太ももの外側に痛みを感じるという患者も多くいます。しかし、診断する場合、18箇所の圧痛点を基準に行うのが一般的です。

4-3.診断基準は圧痛点のうち11箇所以上該当するか

線維筋痛症と診断するためには、指診を行うのが一般的です。圧痛点を4kg以上の負荷をかけて指で押し、痛みを感じる場所と感じない場所を探します。18箇所のうち、11箇所以上に痛みを感じることが基準です。また、痛みが3か月以上持続していることもポイントになります。

4-4.圧痛点が痛くない場合でも診断されるケースがある

診断基準はまだ確立されているわけでなく、必要に応じて更新されています。日本で診断に用いている米国リウマチ学会の診断基準が改定され、線維筋痛症の症状をスコア化して診断するようになりつつあるのです。そのため、圧痛点に痛みがない場合でも、併発する症状などを総合的に見て、線維筋痛症と診断する場合があります。

5.線維筋痛症の治療について

線維筋痛症の治療方法や受診科などをご紹介します。

5-1.問診・触診などを行う

体の状態や痛みを感じ始めた時期などをヒアリングするため、問診を行います。圧痛点は触診で確認し、痛みの部位を特定するのが一般的です。骨や筋肉の異常やほかの疾患と区別するため、レントゲン・MRI・血液検査を行います。

5-2.専門医や心療内科などを受診しよう

線維筋痛症は診断が難しいため、専門医を受診することが大切です。専門医は、日本線維筋痛学会のホームページから検索することができます。内科・リウマチ科・ペインクリニックだけでなく、不定愁訴やうつなどの症状も起こるため、心療内科でケアを受ける方法もおすすめです。

5-3.薬物治療と併せて生活指導や運動療法も行う

線維筋痛症の治療は、薬物療法がメインです。痛み止め・抗けいれん薬・漢方薬などを使います。痛み止めは、症状に応じて強さを調整するのが一般的です。神経性疼痛(とうつう)に効果があるものを処方されるケースが多いでしょう。また、精神症状には、抗うつ薬が処方されます。薬物療法だけでなく、食生活や睡眠などの生活指導を行いながら、運動機能を取り戻すためのリハビリ・心身の健康を促すリラクゼーションなども取り入れるのです。

5-4.痛みがあっても体を動かすことが大切

運動療法では、ストレッチや筋トレなどを行います。線維筋痛症を発症した方は、痛みで筋肉がこわばるため、体を動かすのが苦痛と感じるケースが多いでしょう。しかし、運動療法は体を柔らかくし、血流を改善して健康を取り戻すために行うものです。痛みがあっても、少しずつ無理のない範囲で体を動かすように意識してください。

6.線維筋痛症でよくある質問

線維筋痛症に関する質問を集めました。

Q.線維筋痛症は命に関わる病気なのか?
A.まだ、線維筋痛症での死亡例はありません。しかし、既往症がある場合やほかの病気も併発した場合は、予後が思わしくないケースもあります。

Q.遺伝する恐れのある病気なのか?
A.線維筋痛症は、遺伝性疾患といわれています。多くは環境や身体的負荷などが要因となって起こるものです。遺伝を恐れるより、普段からストレス緩和や生活リズムの改善などに努めましょう。

Q.線維筋痛症の特効薬はあるのか?
A.特効薬はまだありません。しかし、既存の神経性疼痛(とうつう)向けに開発された薬が、線維筋痛症の痛みを緩和するとして、保険適用となっています。

Q.症状が進むと社会生活が送れなくなってしまうのか?
A.はい、寝たきりになる可能性もあります。症状が軽いうちに受診し、薬物治療や運動療法で症状を緩和し、コントロールをすることで、通常の生活を送り続けることができるでしょう。

Q.子どもでも線維筋痛症を発症することはあるのか?
A.はい、あります。子どもの場合、大人とは診断基準が異なり、18箇所ある圧痛点のうち、5箇所以上に痛みがあれば診断されるのが一般的です。ただし、子どもの精神症状に対する薬物治療はリスクが大きいため、カウンセリングなどで症状の緩和を行います。

まとめ

線維筋痛症は、全身に強い痛みやこわばりを感じる病気です。中年女性の発症が多くなっています。痛みで眠れないなど睡眠障害を併発する場合や、周囲から理解を得られないことでうつになる場合もあるでしょう。症状が進行すると、寝たきりになる可能性もあります。早期に医療機関を受診し、薬物治療や運動療法などを行えば、症状をコントロールしながら日常生活を送ることができるでしょう。ただし、診断が難しい病気であるため、専門医を受診することが大切です。

アタナハクリニック院長 矢崎 智子

監修者

矢崎 智子
アタナハクリニック院長
日本産科婦人科学会認定医/高濃度ビタミンC点滴療法学会理事/世界アンチエイジング学会認定医/日本内分泌学会・国際オーソモレキュラー医学会・病巣疾患研究会会員/日本線維筋痛症学会会員

1969年長野県生まれ。平成6年杏林大学医学部卒。産婦人科医としての経験を積んだあと、2005年11月、分子整合栄養医学に基づく栄養療法と東洋医学を中心とした統合医療をおこなうクリニックハイジーアを開設。関節リウマチや線維筋痛症、慢性疲労症候群、摂食障害など、通常治療困難とされる疾患や、不妊症などの婦人科疾患の治療において豊富な臨床経験を持つ。日本では数少ない機能性医療の専門家であり、最も経験豊富な一人。

平成24年、医療とヒーリングの統合を目指し、アタナハクリニックを開設。現在はキネシオロジー(筋肉反射テストを使ったセラピー)の一種であるインテグレートヒーリング(IH)を中心とした統合医療を行なっている。

著書
なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病

雑誌掲載歴
2014年:『ゆほびか(6月号)』『スターピープル(vol49)』『スターピープル(Vol.48)』
2013年:『トリニティ(Vol.48)』
2011年:『日経ヘルス(1月号)』
2010年:『VoCE(12月号)』『AERA with BABY』『anan(1月20日号)』
2009年:『クロワッサン(6月10日号)』『クロワッサン(1月25日号)』