私の副腎疲労体験記②

 

それは、じわりじわりと、いつの頃からかもわからないくらい、ゆっくりと始まっていた。

 

最初に、おかしいなあ、と気づいたのは、毎日の日課であるシャワーを浴びている時だった。

シャワーを浴びるために立っていると、何となく気が遠くなって、立っていられなくなるのだった。

「なんか、しんどい・・・」

立っているのがつらいので、そのうち座って髪を洗ったりするようになったが、それすらも億劫で、とても面倒な作業のように思われた。

シャワーを浴びて身支度をする、というそれだけのことが、ものすごく労力がいることになってしまったのだ。

それは、今から数年前のことだった。

 

思えば、小さい頃から体力には自信がなかった。

それでも、なんとか医学部を卒業し、医師になることができた。

そしてあろうことか、”3K”で有名な産婦人科に入局し、昼も夜もない生活を送ることになった。

大学病院での当直は、週に2~3回。

何もない平穏な夜は稀で、大体は、お産だ救急車だ、と朝までに数回は起こされる。

お産が集中するのはなぜか明け方。寝ぼけ眼でお産に立ち会い、そしてそのまま日勤の勤務になだれこむ・・・。そんな日々を10年近くにわたって過ごした。

産婦人科に限らず、人員不足の多くの病院では、医師が当直明けにそのまま日勤続行、は当たり前のことだった。

そんな大学病院での勤務の後、自分のクリニックを開業した。

 

大学病院での激務に比べたら、開業医は楽だ、という認識が一般的にはあるようだが、私の場合はそうではなかった。

若気の至りというか、夢はあったが経済観念のない世間知らずの小娘が、まだ保険診療の「普通」の診療をしていればよいのに、わけもわからず自由診療のクリニックを立ち上げたのだ。(今考えると相当の怖いもの知らずだ・・・)

診療費の3割だけを患者が負担する保険診療と違って、診療費をすべて自己負担しなければならない自由診療は患者にとっては敷居が高く、よほど必要性を感じない限り、そのようなクリニックには行くことはないだろう。これは、経営する側から見ると、軌道に乗せるのがなかなか難しい、ということだ。

その内容がまた、自由診療クリニックの多くを占める「美容外科」や「美容皮膚科」などではなく、10年以上前の当時はまだほとんど知られていなかった治療法、「栄養療法」だったのだ。残念ながら栄養療法は保険が効かないため、自由診療で治療せざるを得なかった。つまり、栄養療法を認知させる、ということから始めなければならなかったのだ。

クリニック経営はスムーズに軌道に乗った・・・はずもなく、開業してもなお、昼間は診療、夜は産婦人科の当直のバイトに出かける、というハードな日々が続いたのだった。

 

そんな生活がしばらく続いたある一時期、たまたまクリニックまで片道2時間くらいかけて通勤しなければならない期間があった。

最初は、ちょっとした旅気分の通勤が新鮮だったが、さすがにそれが毎日続くと、電車に乗ること自体がひどい苦痛のように感じられるようになった。

その生活が2か月ほど続いた頃だっただろうか。

はたと気づくと、普段通りの生活が、あまりにもしんどい、という状態に見舞われていたのだった。

 

これが、私の「副腎疲労」の始まりだった・・・・。

 

 

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と、ちょっと私小説風に書いてみました(ぶっちゃけてみました・・笑)。

(正確には最初は漢方をメインに開業し、その後栄養療法にシフトしました。どうでもいいですが)

 

副腎疲労は、このような、「ある程度の強いストレス」に「一定期間以上に渡って」さらされた場合に多く起こります。

私の話を例に挙げてみましたが、おそらく私などより、世間にはもっと大変なストレスにさらされている方がたくさんいらっしゃると思います。

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仕事のストレスもそうですが、難しい人間関係(家族や夫婦間、はたまたストーカーやクレーマー)、愛する人の死、家族の介護、子どもの病気、借金、破産、事故、など。

また、何らかの感染、アレルギー、悪い腸内環境、病気、飢餓、甘いものの食べ過ぎ、シフト制の仕事(体内リズムを乱してしまう)、時差、長距離の移動、厳しい労働など、多くの物理的な原因も、副腎に負担をかけます。

 

前回書いたように、副腎は「ストレスと闘う」臓器です。

どんなものであっても、体にとってストレスは「生命の危機」を意味します。

草原でライオンに睨まれたら、本当に生命の危険がありますが、そうでなくても、ストレスを感じると体はそれと同じ反応をするのです。

つまり、とっさに判断して逃げる(または戦う)ためには、脳や筋肉に瞬時のエネルギーを供給しなければなりません。

そのために、身体はコルチゾールやアドレナリン・ノルアドレナリンなどのホルモンや神経伝達物質を産生します。

これらに共通しているのは血糖値を上げる、血圧を上げるなどという働きですが、それによってエネルギーを作り出し、危機を乗り切ろうとするわけです。

 

このストレス反応に関わっているのが、交感神経系と、視床下部-下垂体-副腎系(略してHPA系)です。

コルチゾールはこのHPA系の一部、副腎皮質から分泌される、とても重要なホルモンのひとつであり、ストレス反応の主役と言ってもよいでしょう。

 

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(赤で囲った部分がコルチゾール)

 

そのコルチゾールを十分出せなくなってしまう病態が、「副腎疲労」です。

 

続きます。

 

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